フラメンコ・スター物語〜栄光のディスコグラフィー〜中谷伸一<フリーライター>

 

十代からの活躍も多い早熟のフラメンコ・スターのキャリアは長く、その作品は一人のアーティストに限っても、ときに相当な数に昇る。ライヴを見て気に入り、アルバムを買ったものの、今と芸風が違ってアテが外れた、という経験はないだろうか。そんな時に役立てる、アーティスト別「名盤カタログ」のような形を、1983年創業のアクースティカが長年蓄積した豊富な資料を基に目指そう、というのが本コーナーの遠大なる野望である。全国津々浦々のアフィシオナードの皆様、求むご意見、叱咤激励!

死の直前までの約4年間の密着ドキュメント。ファンなら一生の宝となる傑作!
 中谷伸一(「PURO DRUNKER」執筆者)   2014年2月、心臓発作により66歳で急逝したパコ・デ・ルシア。本作は死の直前までの約4年間(2010〜2014)に密着したドキュメントだ。最大の見所は、約60年に及ぶキャリアの主要な出来事を、パコ自身が具体的かつ詳細に回想し、総括している点。食べ物に事欠くほどの貧しさから、7歳のギター人生は始まった。創作に目覚めたサビーカスの助言。「メシアの出現だった」と述懐するカマロンとの邂逅。「二筋の川」の大ヒット。ギタートリオで苦しみ、開眼したジャズとの共演。セクステット結成、そして解散。遺作「カンシオン・アンダルーサ」(2014)への挑戦、「俺たち(ギタリスト)は独りで暮らさねば」といった人生哲学まで率直に語る。「速弾きなのに、深い」(カルロス・サンタナ)、「フラメンコに収まりきらない巨人」(チック・コリア)、晩年のツアーで踊ったファルーが明かす「メトロノーム特訓」や、「私にはビッグバンだった」というエストレージャ・モレンテが目撃したパコの涙など、共演スターのエピソード全てが興味深い。ゴマ塩の不精髭に眼鏡を掛け、猫背でモニターに向かいミキシングに熱中するパコ。そこには“神”ではない、ただ純粋に音楽を愛し続けた男がいた。十八番のルンバで名場面を巡るラストシーンは、地中海の夕陽のようにまぶしく、一つの時代が終わったことを実感する。ファンなら一生の宝となる傑作。英語字幕、ベスト盤CD2枚(全29曲)付き。 http://acustica-shop.jp/shopdetail/000000004362/
 
2015/02/27
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