パコ・デ・ルシア/CD・DVDリスト

アーティスト解説〜パコ・デ・ルシア〜

 フラメンコの歴史上で、最も大きな影響を後世に与え、多大な変革をもたらした天才フラメンコ・ギタリスト、パコ・デ・ルシア。その影響はフラメンコに留まらず、ボストンのバークレー音楽院の名誉博士号に象徴されるように、ジャズを始めとする世界の音楽にも影響を与えた。
 パコ・デ・ルシアは1947年アンダルシアのアルへシーラスに生まれた。セミプロのギタリストだった父の厳しいスパルタ教育で7歳頃よりギターを始め、12歳で兄ぺぺと“ロス・チキートス・デ・アルヘンシーラス”というタイトルのレコードを録音。その神童ぶりを発揮した。13歳でホセ・グレコ舞踏団のギタリストとして雇われ欧米、オーストラリアへのツアーに参加した。
 20歳の67年、ソロ・デビュー・アルバム“La Fabulosa Guittara De Paco De Lucia(邦題・「天才」)”をリリース。すでに現わし始めた独創性と、絶妙な指さばきや若々しいリズム感は、まぎれもない天才を示していた。その後、発表するアルバム毎に新しい音楽世界を表現し、76年発表のアルバム“Almoraima(アルモライマ)”は、12歳のデビュー以来フラメンコ・ギター一筋に歩いてきた彼が、全存在をかけて構築した一つの究極世界であり、彼の中期の最高傑作である。これ以後パコは、創作のヒントを他の音楽ジャンルに求めて活動していく。
 80年のアル・ディメオラ、ジョン・マクラフリンとパコのスーパー・ギター・トリオの世界ツアーは大成功を収め、一大エポックとなり、パコは一躍世界に知られるようになった。その後チック・コリアほかの他ジャンルのミュージシャンとの共演を重ねたのち、87年、「アルモライマ」以来ほぼ10年ぶりのフラメンコ回帰となるアルバム“Sirocco(シロッコ〜熱風)”を発表。これは一言で言えば、ジャズ和声をフラメンコのドグマで押し切った破綻ギリギリの大傑作である。この作品によってパコは、誰も追いつけない更なる高みに登ってしまった。
 パコ・デ・ルシアは、「天才」「アルモライマ」「シロコ」の3枚のアルバムで、フラメンコを大きく3回変革した。