ギターが底の底から鳴っている!日本がスペインに誇れる正統派の天才、ぺぺ島田。
2017年4月、66歳で惜しくも世を去った日本人には稀有のフラメンコ・ギタリスト、ペペ・エル・チョコラーテ(ペペ島田)。ぺぺ島田の演奏を初めて聴いたのは、彼がまだ15歳ころの少年の時だった。「何だこいつは!」と、その衝撃は72年のパコ・デ・ルシアの初来日と同等のものだった。それ以後彼に近づくというよりは遠くから見守っている感じだった。そして今回、彼の死から3年たった今、このアルバムを聴いて改めて同様の衝撃を受ける結果となった。本作は84年、ぺぺが33歳の時に行われた静岡のライブハウスでのソロコンサートである。5年にも及ぶスペイン生活(プロとして食っていた)から帰国して間もない頃だ。彼の全盛期と言っていい。まず驚くのはギターが底の底から鳴っていることだ。親指の音はギターをえぐるように深く、ラスゲアードの圧倒的な表現力はスペインにも珍しい。アレグリアスのシレンシオは極上の美しさであり、シギリージャの深さは筆舌に尽くし難く、ギター表現の極限にも思える。そして全体の色合いは伝統のド真ん中であり、彼がフラメンコの伝統を一身に受け止め、ぺぺ島田の言葉で語っていることが分かる。ギター一丁でここまで人の心を動かせるとは!全8曲。(加部洋)
Tarantas / Alegrias / Granainas / Rondena / Seguiriyas / Zambra / Solea / Bulerias